• X
  • facebook
  • line

避難所の目安「3.5平方メートル」へ

2025/10/11 08:35

 東日本大震災と原発事故をきっかけに、避難所の姿は大きく変わりました。当時は毛布を敷いただけの環境で多くの人が過ごし、プライバシーや衛生の不足が深刻な問題となりました。その教訓から、避難所の環境改善が課題として強く意識されるようになりました。

 国際的なスフィア基準では、1人あたり3・5平方メートル以上の居住空間が最低限とされています。しかし、日本では、避難所の収容計画において「おおむね2平方メートル程度」を1人あたりの目安とする考え方が広く用いられてきました。体育館や公民館に大人数を収容するためには、そのような線引きが現実的と考えられてきたからです。その一方で、狭さやプライバシー不足は健康被害や心身の負担につながり、国際基準との差は看過できないものとなっています。

 こうした課題を踏まえ、国は2016年に「避難所運営ガイドライン」を策定し、さらに24年12月の改訂では、スフィア基準の数値を盛り込みました。居住空間3・5平方メートル、トイレ20人に1基、水1人1日15リットル以上といった具体的な条件が明記され、避難所開設時からパーティションを設置する考え方も新たに加えられています。これまでの「おおむね2平方メートル」という国内の目安から、国際的に共有される最低基準へと近づけようとする動きが進んでいます。

 ただし、すべての避難所で基準を満たすことは容易ではありません。施設の規模や構造の制約に加えて、そもそも必要な面積を確保できる場所自体が不足している現実があります。さらに資材や人員の限界、自治体ごとの準備状況の差もあり、現場の課題は少なくありません。スフィア基準を目標に掲げながら、現実に即した改善を積み重ねることが、次の災害に備えるために必要とされています。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line