東日本大震災と原発事故をきっかけに、避難所の姿は大きく変わりました。当時、体育館や公民館に毛布を敷いただけの環境で過ごした方も多く、プライバシーの不足や衛生環境の悪化から体調を崩す人が相次ぎました。災害関連死という言葉がより知られるようになり、避難生活そのものが命を脅かす現実は大きな教訓となりました。
その後、国は2016年に「避難所運営ガイドライン」を策定しました。避難所を単なる収容の場ではなく「生活と健康を守る拠点」と位置付け、運営体制や健康管理、寝床改善、要配慮者対応など19項目に整理しました。厚生労働省も「健康管理ガイドライン」を示し、感染症予防や慢性疾患の悪化防止を求めています。さらに近年の指針改定では、段ボールベッドやパーテイション、トイレカーの活用など、より具体的な整備も盛り込まれました。
熊本地震(16年)でのパーテイション活用や能登半島地震(24年)での段ボールベッド整備に見られるように、災害のたびに避難所の工夫は広がりを見せています。
ただし、これは地域による取り組みであり、全国的に普及したとは言い難いのが実情です。備蓄や人員体制は自治体で差が大きく、ガイドライン通りに進まない避難所も少なくありません。要配慮者支援も文書上は整備されても、実際に医療や介護の人材を確保できない例があります。運営する側の負担も依然大きいのが現状です。
避難所は確かに進歩しましたが、それはまだ途上です。経験を踏まえ、現実に即した改善を積み重ねることが次の災害への備えにつながります。次回からは、その具体的な変化を順に紹介していきます。