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地域の背景を反映した教育

2025/09/13 11:20

 原発事故をきっかけに、「放射線」という言葉が私たちの暮らしの中で強く意識されるようになりました。福島県では2011年度から、小中学校で独自の教材を用いた放射線教育が始まり、現実とつながる学びが続けられています。

 一方、これまで見てきたように、広島・長崎では「平和」、青森では「科学技術」、島根では「防災」という異なる軸から放射線教育が行われ、その内容や目的は、地域の歴史や立地によって大きく異なってきました。

 それ以外の地域にも、特徴的な取り組みがあります。たとえば、茨城県東海村では、1999年のJCO臨界事故を教訓として、地域の安全教育の中に放射線に関する内容が組み込まれてきました。新潟県柏崎市や刈羽村では、柏崎刈羽原子力発電所の立地を背景に、原子力災害時の避難行動や放射線防護をテーマにした学習活動が行われています。福井県の原発立地地域(敦賀市・美浜町など)では、エネルギー教育の一環として放射線の基礎知識を学ぶ機会が設けられており、地域の施設見学や出前授業も行われています。他にも、岐阜県瑞浪市などでは、地層処分の研究施設があることから、地学と関連づけて放射線や放射性廃棄物について学ぶ授業が一部で行われています。

 このように、全国各地において、その地域ならではの背景や施設を反映した放射線教育の実践が少しずつ広がってきました。

 一方で、原発や核施設が立地していない地域では、放射線は主に中学校の理科の単元で扱われる範囲にとどまるケースが多いのが実情です。これは、2008年告示の学習指導要領に基づき、中学3年生の「エネルギー資源」単元で「放射線の性質と利用」が扱われていることが背景にあります。

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