児童福祉法に基づく適正な人員を配置していないのにもかかわらず、約5700万円の障害児通所給付費を不正に受給したなどとして、いわき市は16日、株式会社「あんど」(いわき市)が運営し、児童発達支援や放課後等デイサービスなどを提供する市内の二つの事業所について、障害児通所支援事業所の指定を取り消すと発表した。処分は15日付。市は、不正受給した給付費と加算金合わせて約7000万円の返還を求める。
指定が取り消されるのは、いずれも同市常磐湯本町の「放デイU.AND舎」(児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援)と「放デイI.AND舎」(児童発達支援、放課後等デイサービス)の2事業所。不正請求が多額で、虚偽の届け出も長期間続いたため、最も重い行政処分とした。市によると、計36人が利用しており、利用者が別の施設を探す時間を確保するため、処分効力発生日は来年1月15日とした。
市によると、2023年6月ごろ、児童福祉法で定められた常勤の「児童発達支援管理責任者」が配置されていないとの情報提供があった。同責任者は現場責任者に当たる。その後の市の監査で、U.AND舎で計1年11カ月間、I.AND舎では指定を受けた19年9月から約4年間、未配置だったことが判明した。
同責任者が配置されていない場合は障害児通所給付費を減算して請求する必要があったが、こうした手続きを取っていなかった。非常勤の従業者を常勤と偽るなど、実態とは異なる虚偽の届け出も確認された。いずれの事業所も新規指定を申請時、同責任者が確保できないことを知っていたが、市に提出していた書類を変更しなかった。
このため市は、障害児通所支援事業所に指定した。
2施設を運営する「あんど」は福島民友新聞社の取材に「(人員配置基準など)当社の認識と異なる点もあるが、結果的に行政処分を受けたことは重く受け止めている。返還金の返還方法や時期は資金繰りも含めて検討していく」とメールで回答した。利用者の受け入れ先については「市と協議して、新しい受け入れ先を探すなど誠意を持って適切に対応する」とした。
計36人利用、戸惑う保護者
2事業所を利用していた計36人は、指定取り消し処分が発効するまでの3カ月間に新しい受け入れ先を探す必要があり、保護者からは戸惑いの声が上がった。
発達障害のある小学生の息子を放課後デイサービスに預けている市内の40代女性は「子どもは楽しそうに通っていた。送迎もしてくれてすごく助かっていただけに、残念だ」と落胆した。
女性は16日午前、事業所側から処分についてメールで連絡を受けた。将来的に事業を終了する方針であることや、事業終了後も新たな受け入れ先が決まるまで利用者を支援したいとの内容が書かれていたという。
女性は「発達障害のある子どもを預かってもらえるところは少なく、施設に通わせるのも大変だった。別な形でも事業が続いてほしい」と話した。
◇
障害児通所支援 発達障害や知的障害、身体障害などの障害がある子どもが、日常動作の習得や集団生活などに適応するための支援を受ける福祉サービス。未就学児を療育する「児童発達支援」、小中学、高校生らへ社会との交流促進に必要な支援をする「放課後等デイサービス」、専門職員が保育園や小学校などを訪れる「保育所等訪問支援」などがある。