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被災地旅行…訪日客低調、ホープツーリズム 福島県、受け入れ強化へ

2025/09/16 07:55

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災地を巡る福島県独自の旅行施策「ホープツーリズム」の海外からの参加が伸び悩んでいる。県内はインバウンド(訪日客)が増加傾向にあるものの、ホープツーリズムの外国人参加者は1%に満たず、大阪・関西万博に合わせた誘客策も十分な効果は出ていない。情報発信や受け入れ態勢が不十分なことが要因にあるとみられ、県は台湾など海外への情報発信や外国人の受け入れ態勢の整備に力を入れる考えだ。

 ホープツーリズムは参加者に浜通りの被災地を訪問してもらい、復興の現状に触れたり住民と対話したりすることを通じ、震災の教訓や本県復興の姿を国内外に広く発信する取り組み。根強い原発事故の風評払拭にもつながるとし、県が誘客に力を入れる。

 2016年度の開始以降、参加者は増加傾向にあり、24年度は1万9071人が参加した。ただ、海外からの参加はこのうち70人(0.4%)にとどまる。

 本年度は各国から海外観光客が訪れる万博を誘客の好機と捉え、7月に出展した県単独ブースでホープツーリズムの魅力を紹介したり、福島空港大阪線を利用して本県を訪れる旅行商品の開発を旅行会社に働きかけたりした。しかし現時点で大きな成果は見られておらず、「万博効果」も不発に終わった形だ。

 観光庁の調査によると、24年に従業員10人以上の県内宿泊施設を利用した外国人は29万1770人で、新型コロナウイルス禍前の19年を上回り過去最多となった。円安などを背景に今年も好調に推移しており、県はこうした追い風をホープツーリズムの海外からの参加者増につなげたい考えだ。このため福島空港から定期チャーター便が運航する台湾を中心に、情報発信に力を入れる。ホープツーリズムは参加者の6割超を教育旅行が占めることから、台湾で学校向けの説明会を開くなどして魅力を伝える。

 外国語で被災地を案内できる人材の不足も課題。訪れた外国人に震災前後の様子や復興の歩みを紹介できる案内役育成のため、震災に関する情報を通訳に伝える研修会の開催にも引き続き取り組む方針だ。

 来春に本県で開催される大型観光企画「デスティネーションキャンペーン(DC)」では、ホープツーリズムも柱の一つに位置付けられている。来年は震災、原発事故から丸15年の節目の年でもあり、県は「復興の現状や魅力を海外に正しく伝え、風評払拭につながるよう、ホープツーリズムの参加を拡大したい」(観光交流課)としている。

     ◇

 ホープツーリズム 地震と津波、原子力災害、風評被害といった世界で類を見ない複合災害を経験した本県が展開する独自の旅行施策。「フィールドパートナー」と呼ばれる案内役と共に浜通りの被災地を巡り、施設見学や被災者との対話などを通して震災の教訓や復興の現状を学ぶ。事業が始まった2016年度から24年度までの延べ参加者数は約6万9000人に上る。

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