福島県大玉村の大玉中野球部員でつくる「大玉ジュニアタイガーススポーツ少年団中等部」の選手たちは本年度から、地元企業のロゴ入りユニホームを着用してプレーしている。部活動の地域移行で保護者の経済的負担が課題となる中、企業の支援を運営費や遠征費に充てる試みだ。関係者は「人口の少ない地方部の子どもたちのスポーツ環境づくりにもつながる」と期待を寄せる。
8月の炎天下、大玉中のグラウンドでは素振りやキャッチボールなどに汗を流す生徒の姿があった。ユニホームや帽子、ヘルメットには、丸善建工、あだたらアグリサービス、あだたらの里直売所の3社の社名やロゴ入りステッカーが貼られている。同校野球部の主将(14)は「地元の企業から背中を押してもらっている。感謝をプレーや結果で返したい」とうなずいた。練習を見つめた丸善建工社長の佐々木善信さん(50)は「子どもを地域で支える取り組みが広がることが、村の魅力を高めることにつながる」と支援を続ける考えを示す。
中学校の部活動は公式戦が少なく、部員が少ない同校野球部は練習で紅白戦ができないなど試合経験が不足していた。同校は部活動の地域移行の動きの中、「もっと試合をしたい」という子どもたちの思いをかなえようと、大玉ジュニアタイガーススポ少と連携。「中等部」としてスポ少登録を受け、出場できる大会が増えた。
しかし、遠征費などの経済的負担も増加。解決策として同校野球部保護者会が考えたのが、地元企業の支援だった。中学校の部活としては難しかったが、地域クラブとしてスポンサーを募れるようになった。保護者の呼びかけに、地元企業が賛同。県内でも先駆的な取り組みとして始まった。ロゴ入りユニホームなどは中体連以外の大会や練習で活用し、保護者会は大会や年度ごとに協賛企業を募る方針という。
スポ少と連携する試みは、小学生を含めた練習人員確保、指導者の確保など、人口の少ない地方の学校が抱える課題解決に加え、中学生の様子を間近で見るスポ少の子どもたちが、進学後に野球を続けやすい環境にもつながるという。保護者会長の菊地勤さん(50)は「部活動の地域移行は当事者で全て運営することは厳しい。地域全体で子どもを応援する仕組みを進めないと、環境の整った都市部に子どもたちが流出してしまう」と、今後も取り組みを推進する決意を語った。
全国で広がる支援の動き
子どもたちのスポーツ活動を企業が支援する試みは、少子化によるメンバー減少や運営費低下などを背景に、全国で広がりを見せている。高校や大学の部活動と企業がスポンサー契約を結ぶ動きもある。県内では中高生が所属する陸上クラブチーム「すみれプロジェクト」がパートナー企業を募っているほか、福島大サッカー部が福島市内を中心とする企業とスポンサー契約を結んでいる。