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福島県最低賃金1033円答申 地方審、目安額に15円上乗せ

2025/09/06 11:10

 福島地方最低賃金審議会は5日、本県の最低賃金を現行から78円(8.2%)引き上げて時給1033円にするよう福島労働局に答申した。1000円を超えたのは初めて。中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が示した目安額63円に15円を上乗せした形で、県内の引き上げ額は昨年の55円を上回り、過去最大を更新した。

 これまでの議論で労使間の折り合いがつかず、47都道府県の中で本県が最後の答申となった。

 本県の最低賃金は来年1月1日から適用される。労働局によると、2002年度に現行方式となって以来適用時期は例年10~11月で越年するのは初めて。大幅な引き上げには準備期間が必要だと判断した。労働局は22日まで公示し、異議申し出を受け付ける。

 5日に福島市で開かれた審議会には学識経験者ら公益側、使用者側、労働者側から各4人、計12人の委員が出席。専門部会が示した改定額1033円とする結果を基に審議した。熊沢透会長(福島大経済経営学類長・教授)を除く11人で採決した結果、賛成7人、反対4人で、専門部会が示した改定額の採用を決めた。

 採決に先立ち、労働者側の委員からは専門部会の結果を尊重する意見が多く挙がった。委員の一人は物価高の影響に触れ「生活に余裕がないことを痛感している。(最低賃金の引き上げに向け)企業がどのような支援を必要としているか実態を把握し、県や国の適切な施策が必要」と述べた。

 一方、使用者側の委員は専門部会の結果について、労働者の生計費や物価の動向を重視した点には理解を示しつつも「賃上げの実績や支払い能力を考慮してほしい」と強調。急激な賃上げは「県内の中小企業や小規模事業者など、特に最低賃金近傍の労働力への依存が高い業種に大きな影響がある」と訴え、反対した。

 熊沢会長は答申後、報道陣に「最低賃金近傍で働く人の手取りを少しでも増やすことを最優先にした。そのメッセージをくんでほしい」と理解を求めた。答申には原材料価格の高騰で県内中小企業や小規模事業者の経営が厳しい実態を踏まえて、県や国に早急な支援を求める要望も盛り込んだ。

 本県の最低賃金を巡っては、異例となる8回の専門部会を開催。労使間で審議を重ねたが平行線をたどり採決の結果、公益側が示した改定額1033円を専門部会の結論と位置付けた。

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