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【子育て応援隊】育児から仕事生まれた マザーソリューション社長・斎藤祐子さん

2025/01/20 12:00

「便利グッズを売った先に、親御さんの余裕や楽しい時間をつくり出したい」と話す斎藤さん(前列)とスタッフの皆さん

 子育て中に感じる「こういうものがあったら便利だな」を、商品開発の仕事につなげている会社が福島市にあります。社長は2児の母でもある斎藤祐子さん(43)。「最近何に困ってる?」とスタッフと相談しながら、人々の需要に応える商品を次々と提案しています。自分のペースで働ける場をつくり出した斎藤さんのお話には、子育てをしながら楽しく働くためのヒントがたくさんありました。

 出産を機にハンドメードに挑戦

 斎藤さんの会社「マザーソリューション」は、子どもの安全グッズなどを開発、製作し、ネットショップで販売しています。職場でもある自宅には、生地やテープなどの材料、ミシンなどの道具がいっぱいです。

 出産を機にアナウンサーの仕事を退職した斎藤さんの起業のきっかけは、結婚祝いに贈られたミシンで、長女用のおくるみを作ったことでした。ミシンの扱いは「学校の授業で触ったぐらい」だったといいますが、そこから、生地でさまざまなものを作って友人らにプレゼントするようになりました。「作るのが楽しかったです」と当時を振り返ります。

 「売ってみたらいいんじゃない?」という周囲からの提案もあり、作品をハンドメードサイトに出品したところ顧客がつき「『ハンドメード作家』になりました」。出品したアイテムは、赤ちゃんの抱っこひもに付けるよだれパッド、おんぶひも用ののけぞり防止ガードなど、斎藤さん自身が「あったらいいのに」と感じた「子育ての悩みを解決する」商品が中心です。「買いに行くより作る方が早い」と、ひらめいたものを作って売るうちに、どんどん販売規模が大きくなっていきました。

 大手ECモールに出店し、コロナ禍のころには注文が増えたため材料の準備や、サイト作りやSNS発信ができるスタッフを確保しました。21年に会社を起こし、現在はスタッフ約10人と仕事をしています。

 親目線の悩みが製品のヒントに

 斎藤さんは、当初から起業を目指していたわけではありませんでした。ハンドメード作品を販売しながら、子どもが小学校に入るころに就職活動をしたといいます。しかし、子育て中で時間に制限があり、思うように仕事が見つかりませんでした。このことが、斎藤さんの気持ちを動かしました。

 「働けないなら自分で仕事をつくればいい。自分でやっていこう」。今は、雇用されるよりも自由度が高く、自分の頑張りが数字に表れやすい働き方に、楽しみとやりがいを感じています。

 仕事時間は午前8時半から午後4時まで。みんなで注文確認や購入者への礼状書き、製品作りに取り組みます。以前は午後5時まで仕事をしていましたが、「夕方の1時間は大きい」と勤務時間を短縮しました。

 子どもがいるスタッフも多く、斎藤さんは「育児の悩みを話せるし、情報交換もできる。子育てを終えたスタッフもいるので、子育て世代のフォローをしてもらうこともあります。『人を雇う』というより『助けてもらっている』という感覚です」と話します。

 みんなで昼食を取りながら「最近何に困ってる?」と話す中で製品のアイデアが生まれ、その日のうちに形になることもあるそうです。「自分が困っていることは人も困っているはず。需要に応えられたときに、喜びを感じます」

 便利アイテムで少しでも休む時間と心の余裕をつくってほしい

 育児しながらの起業は「時間の捻出が大変でした」と斎藤さん。子どもが寝ているときなどに作業することも多かったそうです。仕事と子育てを両立するために、「『手抜き』することを覚えました」と笑います。「夫が帰宅するまでに夕飯を作り、子どもに栄養あるものを食べさせて…、と思いがちですが、それで自分の余裕がなくなるぐらいなら、総菜を買ってきてお母さんが笑顔でいた方が絶対いい。便利なものに頼るのは決して悪くないと思います」

 自社製品は、頑張っている子育て中の人たちに向けた思いを込めて作っています。「私は子ども向けグッズを売っていますが、物を売った先に生まれる、親御さんの余裕や、楽しい時間をつくり出していきたいんです。便利なアイテムに頼ってもらって、少しでも子育て世代が休む時間と心の余裕をつくってほしいです」

 自身の夫は転勤が多く、就職しようと思っても「すぐに異動したらどうしよう」と、応募することすらためらったといいます。同じように、働き方で悩んでいる子育て世代に向けては、「できない理由を挙げるのではなく、何かできる一歩から始めてみることが大切です。特技でお金を稼いだり、仕事を通じて人とのつながりができたりすると、生活の張り合いにもなります。スキルを学べる方法もたくさんありますよ」と背中を押します。

 オンラインで販売

 これまでに開発した製品で、最も反響があったのは、迷子防止の「キッズハーネス」で、2万個以上購入されました。このほか、ネットショップでは、幼児の靴をまとめてベビーカーなどに下げておける「シューズストラップ」や、弱視の子どものための「布製アイパッチ」、水筒を背中側に固定しておく「背中でキープベルト」など、たくさんの製品を販売しています。最近は、ちょっとしたごみを入れておけるよう企画した携帯用ごみポーチが好評ということです。マザーソリューションの製品はネットショップ「アトリエamane(アマネ)」で購入できます。

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