朝晩は過ごしやすくなったものの、日中は思わず上着を脱ぎたくなるような気温。10月に入ってなお、電車内には背中に汗を滲ませるビジネスパーソンも多い。気候変動は働く人の装いにも変化をもたらし、昨今は「ジャケットを持つ人が減った」との証言もある。さらに秋色ながら夏の素材を使ったアイテムも売れているらしい。SS/AW(春夏/秋冬)というアパレル業界の季節区分で服を選んでいたのはかつてのこと。社会環境が大きく変わりゆく今、仕事服を選ぶ生活者のマインドにどのような変化が生じているのかをビジネスウエア大手の青山商事に聞いた。
【写真】仕事服にブルゾン…? 女性スタイルの仕事着に変化
■女性たちのビジネスウエアが“制服化”、長期にわたって続いた夏の装い
先ごろX(旧Twitter)で「白T」と「タックワイドパンツ」の組み合わせが、若手女子の間で仕事の制服と化しているという投稿が多くの共感や議論を巻き起こした。
男性スタイルのビジネスウエアがある程度パターン化しているのに対して、女性スタイルのビジネスウエアの選択肢は広い。とはいえ、私服カジュアルのように完全に自由というわけではなく、業種や社風などに紐づくドレスコードのようなものは確実に存在する。
さらに性差による業務の偏りもなくなりつつある今、ストレスなく働ける快適性は外せない。程よいトレンド感もほしい──。忙しい朝、それらの条件を備えたコーディネートをしている女性スタイルのビジネスウエアが、どこか"制服化"していくのは必然かもしれない。10月下旬まで夏日が続いた今年、前述の投稿のような「Tシャツ+通気性のいいワイドパンツ」コーデの若い女性をオフィス街で見かけることはたしかに多かった。
同様に昨今、幅広い世代の働く女性のトレンドとなっているのが複数のアイテムを同色・同素材でラインナップした「カセット服」だ。上下揃えれば一瞬でコーデが決まる「タイパの良さ」や、セットアップならではの「高見え、きちんと感」、他アイテムとの組み合わせで着回しが広がる「コスパの良さ」などのメリットから、働く女性の新定番スタイルとなりつつある。
ビジネスウエア大手の青山商事がこの9月に投入した<秋色夏素材>シリーズのブラウス、スカート、パンツのセットアップも好評を博し、「レディース商品全体の売上112%アップ」を達成させている。ヒットの要因はカセット服ならではの利便性もさることながら、春夏/秋冬という従来のアパレルの常識に縛られない発想によるものづくりだった。
■かつてアパレルは“季節先取り”の楽しさを提供…令和は「今の気分にマッチしたものを買う」
秋色夏素材シリーズを企画した同社の高井さやさんは、現代の働く女性たちのスタイリングの変化を次のように語る。
「アパレル業界では8月のお盆明けから秋物を店頭展開し、それと共にお客さまの気分も秋めいていくのがセオリーでした。9月頃からコーディネートにジャケットを取り入れ、だけど着用するのは暑いので手持ちする方も多かったです。ところが昨年にはジャケットの手持ちすらほとんど見かけなくなりました。店頭でも9月に入っても夏物が売れ続けるなど、これまでになかった現象が起きています」
気候変動が深刻化する中、春物(2~4月)、夏物(5~7月)、秋物(8~10月)、冬物(11~1月)というアパレル業界の季節区分はもはや消費者の体感には合わなくなりつつある。特にビジネスウエアは私服以上に、仕事のパフォーマンスを下げるウエアリングは避けたいところ。「おしゃれはガマン」などとは言っていられないのだ。
「また、かつてアパレルは"季節先取り"の楽しさを提供する側面もありましたが、現代の消費者は『今必要なものを、今買って、今着る』という傾向が強くなっています。要因はさまざま考えられますが、アパレルは景気に左右されがちな商材ですので、昨今の物価高騰の影響はとても大きいです。手軽に買い物ができるネットショッピングの定着も、『今の気分とマッチしたものを今買う』というリアルタイム消費に繋がっていると考えられます」
時代と共に変わりゆく働く女性たちのニーズに応える「今、必要とされるビジネスウエア」。それを追求したのが秋色夏素材シリーズだった。
「9月に入ると通勤・退勤時間の朝晩は涼しいものの、ビジネスのコアタイムである日中は暑い日が続きます。店頭ではお客さまから『肌感としては夏物を着たいけど、季節感も出したい』という要望をいただくことが増えました。<秋色夏素材>シリーズでこだわったのは『色は秋色、素材は夏仕様』。従来の季節区分を細分化し、"晩夏"というシーズンにフォーカスした新しい商品企画です」
■ビジネスシーンでNGだった“透けアイテム”も仕事着として活用
働き方の性差がなくなった今、女性スタイルのビジネスウエアにおいて求められるようになったのが“機能性の高さ”だ。
「たとえば夏素材だったら吸水速乾性やUVカットなど、冬素材だったら吸湿発熱素材や裏起毛など、複数の機能が盛り込まれた商品も増えています。出張や外回りなどの多い方には、ウォッシャブルやシワになりにくいなどお手入れがしやすい素材も喜ばれますね」
かつて多く見られた「ブラウスにタイトスカート」といったカチッとしたスタイルから、よりカジュアルに近い方向にシフトしつつあるのも、それだけビジネスの現場で女性たちが忙しく立ち働いている証左だろう。
「全体的に軽やかなスタイルになっているのは事実ですね。象徴的なのはシアー素材のアイテムをオフィスカジュアルに取り入れている方が増えていること。やはり酷暑の影響でしょう。今年は女性誌のビジネスウエア特集でも、シアーアイテムの提案が目立ちました」
トレンドのシアー素材だが、かつてはビジネスシーンで透けるアイテムはNGといった雰囲気もあったはず。それだけ女性のビジネスウエアと一般アパレルの境目が曖昧になりつつあるということだろうか。
「たしかに女性のビジネスウエアの許容度はかつてよりも広がっている印象があります。それだけに『トレンドは取り入れたい。だけどオフィス浮きはしたくない』というニーズも高まっています。その機微なインサイトに応えることこそ、一般アパレルとは異なるビジネスウエアの専門店の役割だと考えています。たとえばシアーアイテムだったらハリのある素材や適度な透け感など『ビジネスとして間違いない装い』を担保したものづくりにこだわるなど、これからも『ここで買ったものならビジネスシーンで着ても大丈夫』という信頼関係をお客さまと築いていきたいですね」
気候変動や多様な働き方、タイパ・コスパ意識の高まりなど、加速する社会変化を反映して進化する女性スタイルのビジネスウエアは、ファッションを超えた時代の写し鏡でもある。今後はどのようなトレンドがこの界隈で生まれるのか注目したい。
取材・文/児玉澄子
夏の長期化で変化したアパレルの「SS/AW」概念、「今必要なものを買う」生活者のニーズにどう応えるか?
2025/10/16 10:08
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