東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を経験し、避難所の環境づくりは大きく見直されてきました。その中で、女性が避難所で感じた不便や不安が多く記録され、避難所の在り方そのものを問い直す契機となりました。こうした課題を受け、国の指針や自治体の運営方針が整理されてきています。
2016年の防災基本計画の改定では、避難所運営に「男女双方の視点を踏まえる」ことが明記され、授乳室や更衣スペース、女性専用スペース、見回り強化などが具体的に示されました。震災後の調査では、女性の約半数が「プライバシーが十分に確保されていなかった」と回答し、着替えや授乳、夜間の移動に負担を感じた人が多かったことが分かります。
自治体の取り組みも進んでいます。内閣府の調査(22年度)では、避難所計画に「授乳室」を盛り込む自治体は約34%、「女性専用スペース」は約36%、「更衣スペースの確保」は約41%でした。必要な配慮が制度として明確になったことは、大きな変化といえます。
一方で、設備だけでは解決しにくい課題も残ります。地域調査では「着替え場所に困った」女性が4割前後、「夜間のトイレ移動が不安」とする人も3割程度おり、避難所環境には地域差が大きいことが示されています。
避難所は多くの人が共同で過ごす場所です。女性や子どもが安心して過ごせる環境の整備は、避難生活の質に直結します。設備の改善とともに、地域の理解や気づきが重なることで、避難所はより過ごしやすい場へと変わっていきます。
