江戸時代から続く新春の恒例行事「双葉町ダルマ市」で知られる同町にだるまの製造販売、観光体験が一体となった施設が整備される。町の縁起物「双葉ダルマ」の製造を手がける白河だるま総本舗(白河市)が設立した新会社「だるまランド」が運営、2028年春の開所を目指す。
町と同社が17日、町内の中野地区復興産業拠点への立地協定を結んだ。施設名は「だるまランド双葉(仮称)」で、双葉ダルマの製造・販売を行うほか、下地作りや成形、絵付けまで全ての工程を公開、見学・体験できるようにする。総本舗は同市でだるまランドを運営しているが、同社によると、だるまの製造全工程を見学・体験できる施設は全国で初めてだという。
施設近隣には東日本大震災・原子力災害伝承館や、県復興祈念公園などが立地。インバウンド(訪日客)需要なども含めて、開所初年度は約2万人の来場者を目指す。また、10人程度の雇用を予定している。
双葉町への立地の背景には、だるまが結んだ縁もあった。町ダルマ市は江戸時代からの歴史がある一方で、町独自のデザインのだるまはなかったという。そこで約30年前に町おこしを考えた地元の商工団体が総本舗13代目の渡辺守栄さんに相談。渡辺さんが太平洋をイメージした水色の縁などが特徴の「ふたば福ダルマ」を制作した。
以来、町の縁起物として双葉ダルマが誕生。総本舗が製造を担い、ダルマ市に出店するJA福島さくら女性部協議会双葉支部ダルマ部会などに納品してきた。町が原発事故からの復興を目指す中で、七転び八起きの縁起物を通してにぎわいづくりに貢献しようと施設の立地を決めた。
町役場で締結式が行われ伊沢史朗町長と、総本舗14代目でだるまランドの渡辺高章社長が協定書を交わした。伊沢町長は「双葉ダルマは復興のシンボル。観光交流の新スポットとして交流人口の拡大に期待したい」、渡辺社長は「だるまの持つ挑戦心などの意味合いは双葉町と重なる。縁を大事にして復興に貢献していきたい」と話した。
