南相馬市のJR小高駅待合室で、千葉市の佐川一彦さん(55)、伊成千春さん(47)が9年間にわたり装飾を続けている。復興を願い人知れず飾り付けする2人の存在に地元住民が気付き、今では一緒に活動するなど広がりをみせている。
南相馬市小高区は、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が2016年7月に解除された。佐川さんは11年の東日本大震災発災直後から、同市や宮城県石巻市などでボランティアを行ってきた。
活動を続ける中、避難指示解除に合わせ、小高の玄関となる駅で季節を感じられるようにと装飾を始めた。「少しでもにぎやかになれば」。佐川さんが石巻市で被災者と話した時、甚大な被害に「季節が感じられない」と言っていたことが脳裏にあった。伊成さんは佐川さんからの勧めもあり、活動に協力している。
飾り付けを始めたのは16年12月。こいのぼりやヒマワリ、紅葉、クリスマスなど時節に合わせ年に8~9回装飾を変更している。誰にでも一目で分かるような装飾を心がけ、材料も自分たちで準備する。
知り合いが交流サイト(SNS)で発信しようとした時、「それはしなくていい」と断り、地道に活動を続けてきた。そのような中で、小高五区行政区長の志賀由紀夫さんが3年前、2人の自主的な活動を知り、行政区としても協力を始めた。行政区の推薦があり、市は10月19日、2人に感謝状を贈った。「これからも続けていきたい」と2人は声をそろえた。
