会津美里町で22日午前、80代の夫婦がクマに襲われ、けがをした。重傷とみられる。県によると、本年度のクマによる人身被害は17人に上り、過去最多を更新した。被害は首から上と手に集中していて、識者は「襲われそうになった際は防御姿勢を取ってほしい」と注意を呼びかけている。
県によると、部位別の被害人数は【表】の通り。複数箇所をけがした人がいるほか「手は防御した結果、けがをした可能性もある」としている。
なぜ首から上や腕を狙われるのか。クマの生態に詳しい福島大食農学類の望月翔太准教授は「(人に攻撃をするため)クマが立ち上がり、爪を振り下ろす際の高さが、人の頭の高さと重なることが理由の一つ」と指摘する。
人に攻撃をするのは、クマの防衛本能が働くためだ。クマは基本的に人を怖がる臆病な生き物。人から逃げるため、威嚇するように攻撃を加えて相手の動きを止め、その隙に逃げる。「一度攻撃を加えると、そのまま立ち去っていくことが多い」と話す。
加えて、成長していく過程で生き物は顔付近への攻撃を嫌がることを学習していく。だから「顔を狙うことが多いのではないか」と推測する。
また冬眠前にエサの近くに人がいた場合、エサを取られないように襲ってくることもある。
被害を逃れるには、どうしたらいいのか。「抵抗すれば余計にクマは興奮する」と望月准教授。「いかに致命傷を負わないかを考え、いち早く頭と首を押さえて地面に丸まる防御姿勢を取ってほしい」と呼びかけた。
クマ対策の予算、知事「緊急対応」
県内で本年度、クマによる人身被害が過去最多となったことを受け、内堀雅雄知事は22日、12月定例県議会を待たずにクマ対策に必要な予算を確保する方針を示した。市町村への専門人材の派遣や箱わななどの資機材の拡充、県民への注意喚起を挙げ、クマ対策の強化を急ぐ考えを強調した。
内堀知事は県庁で県議会会派の自民党、県民連合からそれぞれ緊急要望を受け「12月議会に補正予算案を提出するのが通常の手続きだが、緊急対応しなければならないという強い思いがある」と述べた。市町村の意向を踏まえ、予算の執行方法を含めた具体的な対応方針を決めると言及した。