後継者不足などで減少している喜多方市発祥の喜多方ラーメンを提供する店舗数を維持しようと、喜多方市やラーメン店などの関係者は新規開店を支援するチャレンジショップを始める。連日長い列をつくるラーメン店の職人らが調理から経営までを熱血指導する体制をつくる予定で、関係者は「喜多方ラーメンの盛り上がりにつながるのでは」と期待を寄せる。
「店を継げる人がいなかった」。喜多方ラーメンの発祥として知られ、惜しまれつつも先月末に閉店した「源来軒」3代目代表の近重幸代さん(61)はこう話す。店は開店前の未明から仕込みを始め、創業101年の歴史を守ってきた。しかし調理担当者が高齢となり、体力面でも業務の継続が厳しくなった。2代目から店を継ぐ際に「この味を守れなかったら店を閉めてくれ」と言われた。その味を守り、ラーメンに人生をささげてきた調理担当と同じだけの強い意思を持つ人を見つけられず、閉店を決めた。原材料の高騰も痛手だった。
市内のラーメン店はここ数年、有名店を含めて閉店が続いた。市によると、2010年には約110店舗あったが、現在は約90店舗。老舗ほど「先代からの味を守り抜く」との意識が強く、第三者に継承して味が変わるのを好まないため、後継ぎを血縁に限る店もある。また、朝にラーメンを食べる「朝ラー」として早朝から開店する店も多く、生活スタイルの確立が困難で後継者を育てられなかった。
一方、新規開店を希望する人は増加傾向にあるといい、事業継承だけでなく新規開店の支援の必要性も高まってきた。こうした現状を受け、関係者は21年に閉店した人気店「あべ食堂」を活用した新規創業者向けのチャレンジショップを始める。契約期間は最短半年~1年を想定し、職人がサポートする見通し。広く愛された店舗を活用することで注目を集めたい考えだ。
あべ食堂は市が所有し、改修費を募るガバメントクラウドファンディングの募集を開始。目標額は500万円。順調に集まれば来年度の当初予算に事業費を計上し、本気で起業する人に限定して来年6月ごろに事業者を募集、同8月ごろの開店を目指す。(サイトはこちら)
喜多方ラーメンを提供する飲食店でつくる「蔵のまち喜多方老麺会」代表理事の花見拓さん(42)は「新規の人の不安を取り除けるよう周りも協力したい。店舗が増えれば結果として喜多方のためになるはずだ」と話す。県外にもファンが多い喜多方の名物を後世に残せるか、今後の取り組みが注目される。
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喜多方ラーメン しょうゆベースのスープを基本に中太縮れ麺が特徴。中国から喜多方市に渡ってきた青年が屋台として始め、1924年に元祖となる店をオープンした。その後、蔵造りの建物を撮影する写真家によって喜多方の知名度が上がり、ラーメン人気が広まったとされる。現在は札幌、博多に並ぶ日本三大ラーメンの一つに成長。市役所の「喜多方ラーメン課」や市内のラーメン店でつくる「蔵のまち喜多方老麺会」があるなど、市を挙げてラーメン振興に励む。