戦後80年で終了する日本遺族会主催の「洋上慰霊」の船が11日、神戸港に帰港した。11日間の船旅で台湾海峡やフィリピン沖を巡り、洋上で計9回の船上慰霊祭を開いた。218人の遺族らが海に眠る戦没者らに祈りをささげた。
船は1日に神戸港を出港し、戦艦大和や武蔵の沈没海域も航行。戦争の実相を語り継ぐ「語り部研修」も行われ、6日のフィリピン・マニラへの寄港時は、船内で現地の子どもたちや政府関係者らとの交流もあった。
人間魚雷「回天」を搭載した潜水艦に乗っていた父を硫黄島南方の海で亡くした永福佐代子さん(81)=浜松市=は、船旅を終えて「父の記憶はないが、身近に感じることができた。戦争は絶対に風化してほしくない」と話した。
洋上慰霊は、日本遺族会が1991年度に始めた「慰霊友好親善事業」の一環。事業は遺児の高齢化を理由に2025年度で終了し、本年度は他に2回のフィリピン訪問を予定している。