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芳根京子&高橋海人、役を超え「君で良かった」と実感 二人三脚で紡いだ“ふたつの人生”【インタビュー】

2025/11/13 05:00

  • 映画
映画『君の顔では泣けない』で共演した芳根京子、高橋海人  撮影:山崎美蔓(※崎=たつさき)(C)ORICON NewS inc.

 俳優の芳根京子が主演、King & Princeの高橋海人(※高=はしごだか)が共演する映画『君の顔では泣けない』が14日より公開される。作家・君嶋彼方氏のデビュー作を実写化し、15歳から30歳までの間、入れ替わったままの男女が歩む人生と葛藤を丁寧に描き出す今作。これまでにない“入れ替わりモノ”で高いハードルを感じながらもともに「燃えた」という2人が、支え合い、乗り越えた撮影期間を振り返った。

【写真】芳根京子&高橋海人の撮り下ろしソロショット

 物語の始まりは高校1年生の夏。プールに落ちたことがきっかけで体が入れ替わってしまった坂平陸(芳根)と水村まなみ(高橋)は、180度生活が変わってしまい、クラスメイトとの会話ひとつをとっても戸惑いだらけ。そんな中でも“坂平陸”として生きるまなみは、流れに身を任せて初めての彼女を作ったり…とそつなく過ごしており、そんなまなみに陸はやきもきしながら学生生活を送っていた。

 そこから15年、一度も元に戻ることのなかった2人。高校時代、陸にプロレス技をかけてじゃれていた田崎とまなみの外見である陸の、初々しくもぎこちない初恋など、彼らにしかわからない秘密を共有しながら、30歳までさまざまな出来事を経験していく。そんな日々が続く中、30歳になった夏、突然まなみが問いかける。「もし、元に戻る方法がわかったって言ったら、どうする?」――。

■並々ならぬ覚悟で挑んだ“入れ替わり”「生半可な気持ちでは臨めない」「この作品を超えた景色を見てみたい」

――今作のオファーを聞いた感想を教えてください。

芳根:最初は入れ替わりというワードだけ聞いて脚本と原作を読ませていただき、過去に入れ替わりが題材の役を演じさせていただいたことはありますが、それとはまた違うジャンルの物語だと思いました。これまで入れ替わりのハッピーエンドは戻ることだと思い込んでいましたが、相手の人生を入れ替わったまま生き続けた時に、もはやどっちが相手の人生かわからない。それが最初の衝撃で“でもそうだよね”という新しい感覚を覚えました。

高橋:僕は最初、このタイトルで“もう好き!”と思いました。『君の顔では泣けない』、どういうことなんだろう。自分が入れ替わりものは初めてだったので最初は高いハードルを感じました。芳根さんが言った通り、戻れないまま互いの人生を生きていて、それまで2人がどう過ごしてきたか、これからどう過ごしていくか。まなみとして生きていくということで、これは向き合わないと、生半可な気持ちでは臨めない。全部の作品に対して自分なりに精一杯向き合ってきましたけど、この作品はより一層強く思いました。

芳根:難しいゆえにちょっと燃えた気がします。

高橋:燃える、燃える!

芳根:怖い~!でもやる~!みたいな感じです(笑)

高橋:めちゃくちゃ怖かったですよね。でもすごくやる意味が絶対にある作品だし人間としても成長できるんじゃないかなって。

芳根:この作品を演じきった景色を見てみたいと思ったことを覚えています。

――そういう話は現場でもされたのでしょうか。

芳根:現場ではしていないかもしれないですでも取材を受けるなかで“最初はこう思ってた”と聞くと、そうだったんだ!うれしい!みたいなものはあります。

高橋:考えていたことは同じでした。

芳根:撮影中はとにかく必死でした。そのシーンごとに必死に生きていたから。

高橋:役に隙みたいなものがあると、観てくださる方が感情移入できなくなる怖さもありました。だから丁寧にリハーサルをして本読みをしたりもしていましたね。

――準備の段階でお互いの仕草を参考にしましたか。

高橋:紆余曲折の末、現場では仕草や身振り手振りみたいなものは省き、感情ベースでやっていこうという話になりました。でも最初はとにかくなにかエッセンスがほしいと思って芳根さんのYouTubeを見ました。

芳根:それはまずやることとしては間違っているよって言いました(笑)

高橋:でもすごくすてきで!芳根さんはこういうタイミングで笑うんだとか。最終的に役への持っていき方は変えましたが、勉強時間として有意義でした。

芳根:私と高橋くんが入れ替わったわけではないということが今回の作品での大切なところだと思っています。入れ替わりは難しく複雑に思えてしまうけれど、15年間は戻らないことが今回の作品の面白いところだと思っているので考え方としてはシンプルかなと思います。私は陸のこと、高橋くんはまなみのことを1番に考えるということは、攻め方としては他の作品と変わらないと気づきました。

高橋:一人の人間を生きてるっていうね。

芳根:そこにみんなで気づいてからは気持ちが軽くなりました。仕草とかはその後ついてくるものだし、セリフの言葉遣いなどで陸・まなみとわかりやすくなっているので、このセリフを言って違和感のない人物像をどう作るかを大切にしました。

――燃えるということで、演じる側から見て面白かったこと、発見はありますか。

芳根:この作品を演じきったことでの経験値、得たものはたくさんあるんと思うんですけど、その中でも高橋くんとやれたからこそ、この作品がすごく大きな存在になりました。完成した作品を観てより一層感じています。

高橋:え~!めっちゃうれしい(笑)

芳根:(高橋の口調を真似して)え~!(笑)

高橋:(さらに真似して)え~!(笑)すごくうれしい言葉をくれますね。

芳根:すごく難しかったからこそお芝居はこういう楽しさがあると改めて気づかせてもらえました。それはまなみが高橋くんだったからだと思います。(フライヤーに書かれた)「入れ替わったのが水村で良かったと思った」とはまさにこの言葉の通り、「入れ替わったのが、高橋くんで良かった」って思いました。

高橋:本当に人間的な相性がかなり大事ですもんね。長い間を過ごしているので、大学生になって社会人、30歳になってとか、入れ替わってから陸がまなみとして過ごして体と心がリンクしていくグラデーションを表現するのは楽しかったです。1番最初にどのシーンから撮影開始するのかも現場でみんなで話し合っていたので面白かったです。

芳根:「30歳から演じるか、21歳から演じるか、どっちからがいいですか」って。

高橋:だんだん変わっていくベースをどちらから作るのがいいのか。

芳根:“どっち!? わからない!どっちも難しい!”ってなりましたね。結局、撮影は30歳の陸とまなみからで、まずベースを作って遡(さかのぼ)ろうとなりました。

――本当の自分をさらけ出せる陸とまなみはすてきな関係性ですよね。1年に一度2人が会う、喫茶店『異邦人』での報告会のシーンは特に印象的です。

芳根:とにかくワンシーンが長いので震えました。

高橋:長い上につながっているから3シーンくらいを一気に撮ってしまうこともありました。撮影はすごく暑い時期で、スタッフさんも集中しているから空気がどんどん薄くなっていくんです。カットがかかるたびに外に出て…。

芳根:「空気がおいしい!」とか言ってました(笑)

――陸とまなみ、2人にとってあの時間はどんな時間だったと思いますか。

高橋:いろんなタイミングで2人は会っていたんだろうけど、きっとあの場所に来ることが嫌だなと思うときもあれば、行きたいと思うときもたくさんあっただろうなって。マストで会うことになってはいるけど、そのなかでもたくさんの駆け引きをしてきたんだろうな、もしかしたら戦の場に思えるときもあったのかもしれません。でも、きっと2人が本当の2人でいられる唯一の場、本心でいられる場所だったんだろうなと思います。

芳根:あの場所があったからやってくることができたというのもあるだろうなと思いますし、15年経ってもずっと同じ席に座っていることがグッときます。入れ替わった日の朝から今の今まで変わらずにあの場所があることが2人の心の支えでもありつつ、いろんな戦いがあったんだろうなと思います。

――ここまで本心を話せる人が欲しいとも思いました。

芳根:2人はまた特殊ですけれど。

高橋:親子でもないし兄弟でもない。カップルでもないし…。

芳根:正直、最初は友達でもなかった感じです。

高橋:だから面白いですよね。あまり接点のなかった2人がどんどんかけがえのない存在になっていく。

――恋に発展しなかったのが意外です。

高橋:そんな脳みそにならなかったんだろうな。そんな余裕がなかった。

芳根:それがリアルだと思います。

■“誰かと入れ替わるなら?”の答えは高橋海人&芳根京子?「一回経験済みだから!」

――お二人は初共演ということでどういう印象を持って変化していきましたか。

芳根:もう最初の印象を忘れるくらい不思議な人と思いました(笑)

高橋:上書きが強すぎ?(笑)

芳根:でもすごく話しやすい方だなって思います。陸とまなみはいいバランスでこの2人だから成立しているものも、高橋くんだから、“わからない!難しい!”と思うところでも、言う前から顔に出てしまいます(笑)。苦しんでる、悩んでるとかを素直に出せる空気感があったと思います。まなみの柔らかさ、包む力を高橋くんからも感じました。

高橋:芳根さんがめちゃくちゃ真っすぐ生きている人だから…あ、僕調べで(笑)

芳根:ありがとう(笑)

高橋:わからないときは「わからない」と言うし、難しいときは「難しい」と言うし、楽しいときは「楽しい」と言う。感情を伝えるのがストレートな人だから現場の方々も助かったしみんなで同じ方向を向きやすかった。僕が困っているときも待ってくれる。器の大きな人で人間として主人公、主役みたいな人です。人間としてすごく好きです。

芳根:うれしいです。

――お二人には元々似た要素があったのか、この役だから演じながら通じ合うものが生まれたのか。素の自分たちの波長が合う部分についてどのように感じていますか。

高橋:僕が芳根さんを大好きな理由はとにかくポジティブ。嫌なことがあってもポジティブマインドに変えられる人が大好きなのですが、その中のひとりです。変に気を遣うことも邪推することもなくストレートに感情を受け取れる。それが現場ですごく楽というのもあって、お互いが割と早い段階で素を見せられました。はたから見ると変なノリというか(笑)“なんでこの2人はこんなに笑ってるの?”と思われたかもしれません。

芳根:高橋くんはなにをしても拾ってくれるということがわかったので球を投げたくなるんです。全部返してくれるから。でもそれはこの作品を一緒に演じきったことへの信頼だなと思います。

高橋:僕らもそうですし高校時代の陸とまなみの2人もそう。戦う相手も助け合うのも一人しかいないから。2人で話し合って助け合って演じていくしかない。そういう感じです。

芳根:本当に二人三脚。どんな瞬間も、本当に大変だ!と思う瞬間も足はつながっている…そんな期間でした。

――お互いの演技を見てハッとしたことはありますか。

高橋:芳根さんでいうと、意図してかわからないのですが長い年数を歩んでいく上で目の使い方が印象的で…目が合う合わないもそうですし、目の据わり方もそう。覚悟している瞬間も揺らいでいる瞬間も、仕草に頼らない分、目の動きの細やかさで感情が伝わってきて、泣ける…みたいな。それがすてきでした。

芳根:高橋くんはいい意味ですごく動物的な感覚があると思っているので、お互いにのびのびお芝居できるような状況でありたいと思いました。そうなるとやっぱり私はなにが飛んできても打ち返せるように準備をしなきゃと思ったし、でも考えて考えて、本番でのリラックスの仕方が絶妙だから芝居の中で“この間(ま)、気まずいな”と思う瞬間があっても、次はどんな角度の球が飛んでくるのかわからないけれど“絶対何が何でも拾う!”となれたのが楽しかったです。高橋さんのお芝居の自由さを感じて、そうだよな、それでいいんだよな、そうでありたいなとすごく思いました。

――予想外のお芝居もあったのでしょうか。

芳根:すごく長い沈黙があったんです。気まずいな、セリフ飛んでないよね?と思ってしまうくらいの…(笑)

高橋:普通の現場だったら止められちゃうくらいの(笑)

芳根:でも監督も信頼してくださってていただろうし、私たちも信頼し合っているなと思ったのはああいうときかもしれません。変な間があっても止めないし、ちゃんとつながっていると感じました。

高橋:でも芳根さんが僕のことを動物的感覚と言ってくれることが本当に第一だと思っていて。放牧されている感じ。楽しんで演じて!みたいな(笑)それこそどんなお芝居も受け取ってくれるし、返してくれる感覚があったので楽しかったし、やっぱりのびのびやるのが1番楽しいなと感じました。

――作中で「入れ替わったのが水村で良かった」というセリフがありますが、お二人が“この人だったら入れ替わってもいいな”と思う人はいますか。

芳根:私は良いと思っても相手が嫌な可能性もありますからね(笑)。というように今回は相手のこともすごく考えるようになりました。入れ替わらないのが平和なんです。

高橋:これまでも何度も「誰かと1日入れ替わるなら」とか「人生が入れ替わるなら」とか聞かれてきましたが、これからは重く捉えてしまいそう。

芳根:すごくつらいんですよ、何年も経つと!って思ってしまいます(笑)

高橋:そういう意味では、この映画は入れ替わりはみんなが想像する入れ替わりというファンタジーに対して一石を投じる感じはします。現実は甘くないという苦い部分も含めて。

芳根:なので今の私たちが誰と入れ替わりたいか、という質問は1日考えさせてほしいかもしれません。

高橋:でも楽でいうならここ(芳根)ですよね。

芳根:1回経験済みだから!経験値がありますもんね。

高橋:あのときの感じでって。早いですよね。

芳根:1番話が早いと思います(笑)。

――それくらいお互いを理解することができたんですね。

高橋:撮影期間で、なんとなくですね。

芳根:“あ、これは嫌なんだろうな、良いんだろうな”ってなんとなくの感覚です。すべてがわかったわけではないですが、いろいろな姿が出る作品なんです。難しい役だったからこそ、オフのタイミング、待ち時間にいろいろな自分が出ていたなと思います。

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