秋の全国火災予防運動が、15日まで展開されている。暖房機器を本格的に使う時期に入り、年末年始には人が集まる会合なども多くなる。運動で行われるさまざまな啓発活動に合わせ、一人一人が防火の意識を高めることが重要だ。
総務省消防庁によれば、住宅火災の件数と死者数は、2005~20年にかけて減少傾向にあったが、21年からは再び増加傾向にある。県内の今年の住宅火災による死者数は、8月末現在の速報値で19人に上り、昨年の同時期と比べ4人増加している。このうち、約8割に当たる15人が65歳以上の高齢者となっている。
住宅火災による犠牲を減らすためには、住宅用火災警報器の設置が有効だ。しかし、法令で全ての住宅に設置が義務づけられているにもかかわらず、県内の設置率は8割にとどまる。特に高齢者が生活する住居については、家族が設置を確認するとともに、住宅内の複数の場所に設置することで、台所などでの火災発生が寝室の機器に通知される「連動型」の警報器の導入も視野に、十分な備えを講じてもらいたい。
設置済みの家庭でも、油断は禁物だ。警報器の電池切れや部品の寿命などで、火災を検知できない状態になっている場合もある。正常に作動するかどうかの確認に加え、設置から10年が経過した機器は交換することが必要だ。
岩手県大船渡市で2月に発生した大規模な林野火災を受け、今回の秋の運動でも林野火災の防止は重点推進項目となっている。消防庁は現在、予防や的確な消火、飛び火による延焼の防止につながるよう、自治体や消防機関に熱源探査ドローンや水源の確保などの対策を進めるよう指示している。
それらの対策の一つに、強風が吹いたり、乾燥したりして火災が懸念される場合に出す「林野火災注意報」の創設がある。注意喚起とともに、住民に対して屋外でのたき火などの制限を促す内容で、県内ではおおむね来年1月ごろから運用が始まる見通しになっている。注意報が発令された場合には、たばこも含め、山林の近くで火を使わないことを徹底したい。
今回の運動では、地震火災の対策も重視している。能登半島地震では、過去の地震災害と同様に、停電からの復旧後、家にあった電化製品の漏電などで起きる「通電火災」が発生している。災害時、住宅を失ってしまうと生活基盤は大きく変化する。万が一に備え、揺れを感知して電気を遮断する「感震ブレーカー」の設置も検討してほしい。
